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木場大輔 胡弓リサイタル2023」を振り返って

2023.12.13

 

開催から少し時間が経ってしまいましたが、本年のリサイタルについて改めて振り返ります。

日本独自の擦弦楽器・胡弓の伝統と革新をテーマに、3年連続となる胡弓リサイタルを、2023年10月25日、東京・紀尾井小ホールにて開催いたしました。
内容としては、古典作品において胡弓の器楽性が最も発揮される種目、「胡弓本曲」(胡弓を主奏楽器とする楽曲)と「三曲合奏」(三味線・箏・胡弓または尺八による合奏)に加え、巨大三味線「豪絃」を重低音の胡弓として使用した創作の独奏曲からの構成でした。

木場大輔

 

胡弓本曲「蝉の曲」では、大阪の菊珠三奈子氏の珠玉の箏の音色とともに、恋の終わりを予感した女性の嘆きと、蝉の鳴く情景を胡弓で表現。
胡弓と箏の緻密な絡み合いを追求する一環として、菊珠氏が継承する昔ながらの口伝の音程感覚を共有して取り組みました。またその音程感を活かすため、現在一般的な山田流の箏ではなく、戦前頃まで大阪で使われてきた五八箏を使用し、胡弓もその音色に寄り添うような音色を追求しました。
それらの取り組みにより、芸系の違いを越えて共通する伝承や感覚を客観視してとらえ直し、多面的な角度から胡弓本曲としての本質に迫りました。

木場大輔

 

豪絃独奏「雲龍」(新作初演)では、杵屋佐吉家に伝わる巨大三味線「豪絃」をコントラバス弓で重低音の胡弓として演奏。豪絃ならではの低音域を活かした独奏曲の作曲と演奏に挑みました。
尺八本曲や胡弓本曲、箏曲の段物、手事物の散らしなど、伝統邦楽の手法を応用しつつ、重低音の擦弦楽器ならではの表現を追求することにより、邦楽における低音擦弦楽器を、独奏楽器として成立させられることを示しました。

木場大輔

 

三曲合奏「石橋」では、岡村慎太郎氏の三絃(地歌における三味線の正式名称)、中井智弥氏の箏とともに、三絃・箏・胡弓が対等に渡り合う三曲合奏に取り組みました。
奏者自身による近年の胡弓手付により、吉沢検校以降受け継がれた、胡弓の緻密で高度な器楽性を継承し、今後も伝統音楽における胡弓のレパートリーをさらに充実・発展させ得ることを示すことができました。

来場者の反応としては、「蝉の曲」「石橋」の楽曲そのものや出演者の演奏への賛辞はもちろんのこと、「石橋」に対しては、対等な器楽性を発揮する胡弓手付に驚きと称賛や、今後もいろんな曲で聴いてみたい、などの声が邦楽研究者からも寄せられました。
アンケートでひときわ群を抜いていたのは、豪絃独奏「雲龍」への驚きと印象の声で、豪絃の今後の展開への期待も多く寄せられました。伝統芸能界へのインパクトも大きく、早速に豪絃の新たな演奏オファーが寄せられています。

今後も胡弓リサイタルを通じて、胡弓の伝統の継承と応用、胡弓の主体性の発展をテーマに、取り組んで参りたいと考えております。
引き続きさらなるご支援賜りますよう、どうか何卒よろしくお願い申し上げます。

 


木場大輔 胡弓の会 代表 木場大輔

木場大輔 胡弓リサイタル2023


日時 2023年10月25日 19:00開演
会場 紀尾井小ホール


1.胡弓本曲「蝉の曲」 吉沢検校作曲 (19世紀中期)
  胡
弓 木場大輔  歌・箏 菊珠三奈子
2.豪絃独奏「雲龍」(新作初演) 木場大輔作曲 (2023)
  豪絃 木場大輔
3.三曲合奏「石橋」 芳沢金七・若村藤四郎作曲 (18世紀前期) 木場大輔胡弓手付 (2022)
  歌・三絃 岡村慎太郎  歌・箏 中井智弥  胡弓 木場大輔


主催 木場大輔 胡弓の会
舞台 株式会社琴光堂
制作 有限会社古典空間
写真撮影 唐亨
映像撮影 有限会社マインド
チラシ・プログラムデザイン 山本デザイン
助成 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京[東京芸術文化創造発信助成]

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